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Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima- |
Wednesday, January 26, 2005the analog crisis
昨年イルフォードが写真感剤部門の低迷、債務超過がたたり、社を売却する方向で動くという、僕たちモノクロ写真趣味の面々にとってショッキングなニュースが駆け巡ったのはまだ記憶に新しいことです。しかしその後も商品ラインナップを縮小しながらも供給を続けていることを見ると、ひとまずは落ち着いているようですね(プレスリリースが04.9.10.以降出されていないので、正確な情報がないのですが)。
写真の世界がデジタル(デジタルカメラ)を中心に動いているのはもう周知の事実ですよね。 僕の仕事はプロフェッショナル・オーディオに関わる業務なのですが、デジタルというメディアはCDの登場によって、もう長い年月お馴染みのものとなっています。と同時にそのプロセスのデジタル化も早くから進行しておりました。ところがオーディオの世界では、コンシューマー・レベルにおいてアナログLPや管球式のアンプなどいまだにアナログ・システムの熱狂的なファンが存在し、プロフェッショナル現場でもアナログ回路を持つ機器、システムは存在し、使われ続けています。 クラシック音楽の録音はデジタル創明期からシステムのフル・デジタル化が進み、それによりデジタル・クオリティを保つことも商品売上数字につながってきました。しかしポピュラー音楽全般ではデジタルのよさ、アナログのよさのバランスをとりつつ作品が制作されてきました。 レコード、CD制作のプロセスにおける録音媒体とは「テープ」を指していました。ステレオ・2チャンネルのマスターを作成する1/4インチ幅のテープ(一般にオープンリールと呼ばれているもの)、またはその倍の1/2インチ幅のテープ。複数トラック(マルチトラック)を録音するための1インチや2インチ幅のテープ。またデジタル記録をする場合(デジタル・レコーダー)でも大容量を連続的に記録することが可能なため「テープ」は使われてきました。 デジタル・レコーダーでは、このテープに代わるメディアとしてMOやハードディスクに記録していく試みは早くから行われてきましたが、ことポピュラー音楽の現場において「テープ」の存在を脅かす規模になってきたのは、まだここ7-8年のことなのです。 ところで録音メディアで考えた場合のアナログ(アナログテープ)の優位性ですが、なんといっても音圧が稼げるということでしょう。これは物理的な音量レベルが同一に見える場合でも、耳で聞こえる平均的な音量を大きくすることができるという意味です。ダイナミックレンジの幅を大きく必要としないポップ、ロック音楽はその他音色的な理由も合わせて、この音圧を稼ぐという大きな利点のため「いまだに」アナログ用のテープという記録媒体は(アナログレコーダーとともに)、ハードディスクに記録するワークステーション・タイプのシステムと共存して、活躍をしているのです。 この業務用アナログ・テープは専門の販売業者を通じて購入しています。僕たちの現場で通用するテープは古くからスコッチ・ブランドの3M、テープレコーダーでも有名だったAMPEX、欧州代表のBASF(一時はAGFA)、と全て海外メーカー品です。早々にテープ市場から撤退した3M、数度の企業買収にあった末、世から消えたBASFブランド。そしてAMPEXは数年前からその受け皿となったQUANTEGYとして最後の砦を守ってきました。ところがこの最後の砦も、今年に入ってから国内在庫がほんとうに乏しくなってしまいました。販売業者さんも(おそらくうちの社は消費量では国内で最大、世界的にも10指に入るであろう)うちの需要に答えるべく奮闘してきていただきましたが、ほんとうに過酷な状況になってきました。 QUANTEGY社からはなんら正式なアナウンスがなく、「潰れた」という噂が広く先行する中、今日米国の業界情報誌のサイトに行き着きました。そこでの記事によるとQUANTEGY社は財政上の理由から12月末でもって操業が止まっており、一部従業員の解雇があり、再操業の見通しがたっていないとのこと。しかし会社は連邦破産法11条、破産保護の申請を出していないことから、再建を望んでいるようです。 しかし現実的にはどうなのでしょうか? いくつかのテープ・メディアは再操業されるかもしれませんが、プロ用アナログ・テープは? うちの会社の場合、この先に利用予約をされているお客様に対して、その多くがアナログ・テープの使用を望んではいますが、「もう世の中にありません」と答える日が(いずれ来るであろうと思っていましたが)もうすぐ近くであることを実感しました。 ブランドやモデルを選択するだけでなく、同じモデルでも基準録音レベルの設定や、バイアス電流値の微妙な違いを変化調整することによって、そのセッションにおける最良の音色を作り出す、そういった原盤マスター作成はもう2度とできなくなるのでしょうね。 Archives(previous archive links)
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