Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima-

Wednesday, February 02, 2005

time of reading and chinese tea

中島たい子さんの「漢方小説」を読みました(参考)。中島さんは既に脚本家として第一線で活躍されており、この小説の主人公・川波みのりも脚本家という設定。元カレが結婚すると知ってから、原因不明の痙攣に襲われる。いくつかの病院を巡るが異常は見つからず、5つめに漢方診療所を訪れる。そして自分の病気とその診療所で行われる中医学の狭間に揺れながら物語りは動いていく、というお話し。
物語の中で、どうしても精神と病気を結びつける気になれない「みのり」は『じゃ、私はいったいどうしたいの?』と自問することになりますが、脚本家としてハリウッドのシナリオ作法を当てはめてみます。すなわちオーソドックスなタイプの作品は主人公の目的がちゃんと明確になっているということで、「みのり」は例を挙げて、
タイタニックで言えば、主人公ディカプリオの目的は『身分の違う可愛い娘(ケイト)と結ばれたい』になる。スタンド・バイ・ミーで言えば、四人の少年の目的は『誰よりも先に死体を見つけたい』になる。私の場合だと、やはり『病気を治したい』だ。(中略)よくできている作品には、もう一歩踏み込んだ真の目的が隠されている。ディカプリオは『鳥カゴの中のケイトを自由にしてあげたい』、これこそ隠された本当の目的だ。スタンド・バイ・ミーの少年たちは『怖いものに立ち向かう自身をつけたい』になる。では、もうひとつ踏み込んだところにある私の目的は何だろうか?
(中島たい子著「漢方小説」集英社より引用)

この自問がこの小説のキーとなります。そしてその「もうひとつ踏み込んだところにある私の目的」探しがこの小説なのです。
正直書きますと、「みのり」はそれを見つけることに成功します。そして明確にその目的が「みのり」の口から出てくるのですが、これは書かないでいて欲しかったです。充分に組み立てられ、よく書かれている小説なので、読者はおよそそのテーマを外さず読んでいける本であると思えるからこそ、それは読者に委ねてほしかったです。そのことだけが残念に思えました。

しかし、ほんと面白い小説であることは確かです。読みやすく、肩のこらない語り口ですので、中国茶でも煎れながら、良い香りとともに読み進めば、10煎目を飲むころには利尿作用もよく働くようになり、体に良い時間が過ごせるかな? と思います。

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