Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima-

Saturday, March 26, 2005

Kaoru Takamura

書店の分類ではミステリー小説の部類に仕分けされていることが多いのですが、私的にはもっと広義な人間小説、社会小説とでも呼びたくなる種の作品群だと思っています。高村薫さんの小説のことです。多作な作家ではありませんが、あの1作1作の充実度、細密な描写、を考えると逆に一朝一夕で書ける類のものではないと誰もが思うでしょう。
実際のところ僕自身は「リヴィエラを撃て 」「マークスの山 」、そして短編集「地を這う虫」しか高村さんの小説を読んでいないにもかかわらず、その魅力にはどっぷりハマっていると言えます。特に長編作品は、その質的量的な大きさを考えると読み始めるにあたって、相当の気合が必要なのですが、一旦読み始めてしまうと、あれよあれよと作品に惹き込まれ一気に読み進んでしまいたくなる楽しさも併せ持っています。
今日はそんな高村さんのエッセイ集「半眼訥訥」を買いました。収容された文章の中に、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団来日時の公演パンフレット内に書かれた彼女の音楽に関する文章が含まれていたからです。ピアニストを目指していたという高村さんが描写する音楽は(音楽の側の人間にとって他の作家が描写する音楽は、やはり稚拙だなと感じることが多いのに対し)ピアニストならではの楽曲の構造を深く解析し、その魅力を単に感情に流されず押さえている点で素晴らしいのです。
ところで僕はコンサートなどに行っても公演パンフなどを買った例がなく、というか、あんなもの高い金払って買うかぐらいのことを思っていたのですが、ウィーンフィルのパンフともなると高村さんの文章が読めるのかぁ、とちょっと悔しい(といってもそれらの公演に行ったわけではない)。
3篇収められたウィーンフィルに纏わる文章は、ブラームスについて2篇、シューマンについて1篇。ことブラームスの文章は興味津々で読ませていただきました。

ところで長編小説「リヴィエラを撃て」には、主人公のひとりノーマン・シンクレアがブラームスのピアノ・コンチェルト2番を弾くコンサートのシーンがあり、そこでの演奏描写が、小説上のものであると理解しながらも、あまりにリアルであり、かつそのような演奏が、もし現実に為されたのならば、それは歴史に残る名演となり、なににも変えがたい至福の時間であり、かつそれ以降聴く同曲の演奏には決して満足が得られないという不幸を同時に獲得してしまうであろう、すごい演奏描写なのです。
そんなピアノ・コンチェルトに出会ってみたいなぁ。

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