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Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima- |
Saturday, April 02, 2005How Deep Is Your Love
日が落ちても、まだ穏やかな暖かさに包まれている。金曜の宵の口、人の波を掻き分けながら渋谷、公園通りを登る。
昨夜は鈴木奈緒さんのピアノ・トリオを聴きに、初めて訪れるライブハウス「公園通りクラシックス」にお邪魔しました。山手教会の地下駐車場を入っていき、もともとはここも駐車スペースであったであろう場所に、そのライブハウスは在りました。白くペイントされたコンクリート剥き出しのスペース。ステージに向いて両サイドは吸音素材を壁に取り付けていましたが、けっこう残響のあるライブハウスです。 そしてステージに向けて整然と椅子が並べられ、いつも通っているレストラン・バーのようなジャズ・クラブとは違い、どちらかというとロック系のライブハウス(には椅子はほとんどありませんが)に近いスタイルかなぁ。おそらくご本人の手作りと思われる曲リスト、曲説明を含む冊子も用意されており、このあたりはサロン系のクラシック・コンサートを思わせます。 お客さんも埋まり、メンバーが登場してきました。僕はいつになく緊張しています。 ジャズ・ナンバー「On Green Dolphin Street」から始まり軽やかなスイング感に満たされます。ピアノタッチはシャープな印象。そして1音1音がくっきりと浮き出てくるような明瞭さを伴っています。次曲もスタンダード「How Deep is the Ocean」。へんなリズムの崩しもなく、聴きやすい。どちらかと言えば黒っぽさよりも欧州的な雰囲気を持ったピアノ・スタイルなのでしょう。そのスタイルは映画「いそしぎ」の主題歌で活かされ、そしてフランス、ジャズ・ピアノの大御所ミシェル・ペトルチアーニの曲「La Champagne」ではもうハマりまくりです。 そしてご自身のオリジナル曲、ニューヨークに滞在したときの印象を曲にしたという「NY」。これはすごく良かったです。僕自身はかの地に訪れたことはありませんが、街のもっとも輝いている部分を、今、切り取ってきたばかりというような鮮度のある、そしてキラキラと輝く様が、手にとれるところへ提示された感じ。アクの強い演奏でよどんだNYになるより、その欧州的なスタイルでもって、外から入り込んだNYを感じられます。そして1stステージ最後はサンバのリズムでACジョビンの「Favela」という曲。ラテンのリズムの描き方も気持ちよいです。 全体的に、僕の前から2列めの席では、ほんとうに惜しいことにベースのラインが全然見えてこなかったこと。ピアノ・トリオは3者が均等なバランスで絡み合うアンサンブルの妙を聴きたいのですが、ここの響きの多い箱で、ベースという楽器の「鳴り」を中心に捉えるPA手法では、厳しいよなぁ。とくにドラムがバスドラムを踏むと、全ての低域をマスクしてしまうので、この処理と、アンサンブル・バランスのとりかたを、ここの箱のPA担当はもっと研究したほうがいいかも知れません。ベーシストの宇治雅久さん、初めて聴く方でしたが、ピッチ・コントロールもタッチも安定した演奏をされていたので、たいへん残念なことでした。もっと彼のフレージングを聴きたかったなぁ。ドラムの梅津光司さんも初めて聴かせてもらいましたが、これも響きの多い箱のため、フルパワーなドラミングを一切できない状況下、しかしとてもよく歌う、柔らかなスティックさばき、ブラシさばきを聴かせてくれました。3人は付き合いも古いようで、息のあったライブ・コンビネーションが展開されていました。 ピアノの鈴木奈緒さんは実は僕の古い知り合い、高校の後輩で、なんと20数年ぶりの再開でした。当時からピアノが抜群に上手だった彼女が、こうしてプロの演奏家として在ることに、なんら疑問はありません。しかし彼女の演奏を今こうして聴くことができるなどとは思いも依りませんでした。 2ndステージ、最初はコール・ポーターの「Just One Of Those Things」。思いきりスインギーなナンバーです。このピアノ・トリオというか、奈緒さんは、けっこうしっかり書く、アレンジするタイプのようですね。もちろんジャズですから充分なアドリブを伴ってひとつの曲を進行していくわけですが、譜面もないようなところから、各メンバーの創造性を頼りに繰り広げていくスタイルとは違い、決め事と即興のバランス上で適度な高揚感を与えられながら聴くアンサンブルは気持ちがよいものです。 ガーシュインの「I Love You Porgy」。このバラードはやばいです。聴く側をたいへん感傷的にさせます。きらきらと立ち上がってくるピアノのフレーズが心に迫ってきます。 3曲目、奈緒さんのオリジナル「Hoje」。ポルトガル語で「今日」という意味だそうです。それを、一期一会、今日という日は1回しかないという想いをこめて、弾いていらっしゃるそうです。 20年の歳月を経て人と再会をするなんていうのは生まれて初めての経験です。しかし不思議なものですね。お互いまったく別々の人生を歩んできた長い時間がまるで無かったかのような感覚です。懐かしいという感じがしないんですよね。そうですねぇ、ここ1、2ヶ月会ってなくて「やあ、元気?」って感じ。 次の曲はビージーズです。「愛はきらめきの中に/How Deep Is Your Love」。映画サタデーナイトフィーバーでビージーズが大ヒットを飛ばしまくっていたのは中学生のころでした。そしてあの有名な、そして珠玉のようなメロディが奏でられるとタイムスリップした感じになります。これはあくまで僕個人的な感覚。彼女にとってこの曲は、別の面で大切な楽曲であるようです。ある時期、たいへん励みになった、というような。 最後はジェローム・カーンの「Look for the Sirver Lining」。この演奏のころ、僕にはあまり音が入ってこなくなりました。僕はいつもかなり客観的に音楽を捉えているんですけどね。いろんなことが頭の中を交錯しており、エンディングにふさわしい、華々しい演奏の中、ひとり浮遊している感じです。 終演後、出口付近でお客さんをひとりひとり見送る彼女。僕は残りのワインをゆっくりと飲み、あらかた他のお客さんが退場されていくのを待ちます。あとは近親者しか残っていないころ出口へ向かいました。「全然変わってないね」「そっちだって、HPのプロフィールに載ってた写真ですぐ判ったよ」。そして彼女の最近の活動について、僕の仕事について。彼女は自主制作でオリジナル曲のCDをリリースされていましたので、その場でそれを購入し、帰りの電車内で早速聴き始めました。アルバム・タイトル「suite luz」、光の組曲という意味。プロローグはブラジルっぽいピアノのリフで始まりました。
Comments:
すえさん、
お恥ずかしいながら、再開してきました。でもこれは彼女がアーティストになっていたから(今の彼女の存在を知るきっかけも含めて)可能だったことですね。ライブ見にいくよって、言えますからね。例えその所在を知っても普通のお勤めとかだったら「こんどお会いしませんか?」ってうーん、僕には言えなかったと思います。 おおえさん、 なんだおおえさんも再開劇をしていたんじゃないですか。僕にとっては初めてのことで、こんなことはもう2度とないかなぁ。ですから彼女とは新たな関係をつくっていけたらいいなと思っています。 Post a Comment << Back to the top of diary Archives(previous archive links)
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