Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima-

Sunday, July 31, 2005

an encounter

最近はヘビーローテーションしているCDが多いです。6月22日リリース、白崎彩子さんの2ndアルバム「Musically Yours」。そして7月21日リリース、村上ゆきさんのこれまた待望の2ndアルバム「While My Piano Gently Weeps」。ニューヨーク在住の白崎さんによる旬な現地感覚をもったストレイト・アヘッドなジャズ。そしてジャズとかロックとか、ポップスという垣根を飛び越え無垢な音楽、うた、そのものを表現している村上さんと、まったく異なったスタイルの音楽ですが、どちらも強く僕の心に染み入ってきます。
そしてこの両者とともに、もう1枚、ここ数ヶ月聴きまくっているCDがあります。
今年4月1日、鈴木奈緒さんというピアニストのライブに初めてお邪魔し、そして購入した彼女の自主制作による1stアルバム「suite luz」がそれです。彼女は高校の後輩で実に20年以上経っての再会だったのですが、後輩と呼ぶには失礼にあたるほど素敵なアーティストになっており、彼女の音楽に対する真摯な取り組みは敬意を表するに値すると思っています。
4月のライブはピアノ・トリオで行われ、ポップスやスタンダードの曲も含み、ジャズの伝統的な方向性によって組み立てられた演奏を核として進行していきましたが、その日の帰りの電車の中で早速パッケージを開け聴き始めたCD「suite luz」では、もっとコンテンポラリーな音楽が展開されていました。そしてたった先程ライブで体験した音楽と、そのCDから再生される音楽。その幅の広さに驚かされると同時に、その表現された世界がどんどんと僕の中に入り込んできました。
長い年月を経た再会は、時の偶然、だったのでしょう。そしてそれはたいへん嬉しい瞬間でもありました。しかし彼女のプロの音楽家という面に対しては(僕もプロの制作者という立場で)完全にニュートラルな気持ちで接したのですが、すなわち再会という事実からくる感情を抜きにして聴いたにも拘わらず、こんなにも僕の音楽の趣向にマッチし、そして大きな影響力をもって入り込んでくるなんて想像もしておりませんでしたので、自分自身、正直驚いています。
その「suite luz」は、このアルバムのために彼女自身がポルトガルで撮影した雰囲気のある写真に囲まれ、そのヨーロッパの古い街に降り注ぐ陽光と、それに寄り添う陰が、日がな一日、時間の経過とともに移ろいゆく様を表したかのような、和音の推移と旋律の交わり、そして時の普遍性とパトスが心地よいリズムに支えらた素晴らしいアルバムなのです。

先週の木曜28日にはそんな素晴らしい音楽を奏でる彼女のライブに再びお邪魔してきました。
前回と同じ渋谷の「公園通りクラシックス」。4月には少し緊張しながら訪れたのですが、今回はずいぶんリラックスしての入店です。最初のステージはピアノ・ソロによる演奏。ソロとは、その言葉どおり、アンサンブルによる支えを持っていない音楽のため、一人きりで全てを表現しなくてはならず、音楽家にとって最も難しく、集中を切らすことが許されないスタイルです。MCで大好きと語っていたハービー・ハンコックの「Dolphin Dance」で幕を開けたステージ。彼女の緊張と集中が伝わってきます。この1stステージをどのくらいのペースで駆けていくのか、もちろんこちらは判らずに聴いていたのですが、どうやら1曲1曲を6、7分くらいにまとめていくようです。ジャズとしては思ったよりコンパクトかな? しかしこのようにまとめあげるのは、やるべきことと、省略すべきことを、きちんと整理し、曲そのものを消化していないと為し得ないことだと思います。全6曲演奏したこのソロによるステージでは、もっともスインギーであった「Basin Street Blues」。そして彼女のオリジナル曲、限定販売された2ndアルバム(このアルバム既に限定数を販売しきってるのですが、彼女のご好意でそのサンプル盤を頂戴していました。「suite luz」とはまた違った方向性で、尺八奏者と二胡/ヴァイオリン奏者とのライブを収録し、聴き応えのある内容。特に彼女のオリジナル曲が素晴らしいです。)に収録されていた「Dear, Someday-そして いつの日か」の演奏がよかったです。
2ndステージはトリオでの演奏。ドラム、ベースともに4月と同じメンバー。実は4月のライブでは現場のサウンドに難があり、そのことを指摘していたのですが、今回はきちんと修正されており、とても聴きやすいアンサンブル・サウンドになっていました。ここでも彼女のオリジナル、前回のライブで聴いた「NY」、そして新曲「夕なぎ」(でしたっけ?)の演奏に引き寄せられます。ああ、僕の感覚は彼女が書く音楽にとことん反応するのだなぁ。とても不思議です。
実は5月ごろ、前回のライブを収録した音源をオーディオCDのデータ化するマスタリングという作業を僕の手でお手伝いしたのですが、その際に繰り返し聴いた演奏の中で「NY」はニューヨークに訪れた彼女が、そのストレンジャーな視線で捕らえた印象を曲にしたもので、ほんといい曲だなぁって思っていたので、今回のライブでも聴けたことは実にラッキーでした。
また新曲では、演奏そのものはピアノ・トリオによる伝統的な方向であるにも拘わらず、曲のコード感やフレージングに、どことなく1stアルバム「suite luz」に存在した音楽的陰影を感じたことが、その曲に引き寄せられた原因ではないかと思います。
この日は少しだけ撮影をさせてもらいました。canon pの50mmと、newFM2の85mmで狙ってみました。DELTA3200をマイクロフェンでcanonをEI3200、FM2をEI2400となる現像をしてみました。販売終了となった市販のマイクロフェンで行う最後の現像かもしれません。(まだ500ml残っていますが、それはポスト・マイクロフェンのためのテストピースを作成するために使う予定です。)
彼女との再会は、同時に、音楽家鈴木奈緒さんとの新しい出会いでもあったのですが、それはとても幸運で素敵な出会いであったと思う今日このごろなのであります。

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