Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima-

Saturday, July 09, 2005

the passion

特別な想いのある楽曲の続きですが、4番目ともなるとかなりマニアックになってきます。

Paco de Lucia/Monti's Csardas

パコ・デ・ルシアはフラメンコというスペイン南部のジプシーによる(舞踏)音楽を世界的なものにしたというギタリストです。
これを聴いたのも15歳のときでした。先日のベートーヴェンの体験やジャズを初めて(ちゃんと)聴いたのも同時期であることを考えると、自分で言うのもなんですが(一般的にも)多感な時期だったのでしょうね。
ストレイト・アヘッドなジャズを聴き始める前には当時流行っていたクロスオーバー/フュージョンというジャズから派生しロックなどの影響も受けつつ、プレイヤーの即興演奏に多くの比重をかけるのではなく、バンド・アンサンブルにより比重を移した音楽を聴くようになっていました。とくにギタリストものでラリー・カールトンやリー・リトナーなど有名でしたし、若きパット・メセニーを初めて聴いたのもこのころです。
また野外夏フェスなども盛んになってきたころでジャズ、フュージョン系では読売ランド・イーストで行われていたライブ・アンダー・ザ・スカイというイベントが毎年盛り上がっていたころでもあります。
パコ・デ・ルシアの演奏に初めて触れたのは、1980年のライブ・アンダー・ザ・スカイの模様をオンエアしたTVとFM番組で、ギタリスト、ジョン・マクラフリン、そしてラリー・コリエルとトリオを組んだスーパー・ギター・トリオという(ダサい名称の)グループでの演奏でした(注1)。アコースティック・ギター3本による即興演奏主体のこのグループの中で、とりわけ光っていたギタリストがパコ・デ・ルシア。
その存在はブームとなり、彼の旧作LPがどんどんリリースされるようになり、またそのときの来日の際に日本で録音していった新作も直ぐ後にリリースされました(アルバム「カストロ・マリン」)。
今回のお題目にある楽曲モンティのチャールダッシュは、彼の旧作をFMで特集していたのを聴き、その情熱溢れる演奏に身震いするほどの感動を覚え、そしてレコード店に、収録されたアルバム「霊感」を買いに走ったのです。

パコ・デ・ルシアは60年代後半にデビュー。「モデルノ」と称される新しいフラメンコ音楽を築き、いまやスペインを代表する国家的アーティストになっています。元来フラメンコはジプシーたちのカタルシスとしてスペインの中央社会からは軽視されていた芸能ですが、アカデミックなものしか演ずることのできなかったマドリッド王立歌劇場で、初めてフラメンコのステージを披露したパイオニアなのです。(後述する「ライブ」というアルバムが、そのときの実況録音盤です。)

モンティのチャールダッシュ。これ実は純粋なフラメンコの楽曲ではありません。チャールダッシュというのはハンガリーのジプシーによる舞曲スタイルです。喜歌劇(オペレッタ)に「チャールダッシュの女王」というのがあったりしますが、あのチャールダッシュです。作曲者V・モンティ(1868-1922)はイタリア人ヴァイオリニスト。このチャールダッシュを見事にバイオリンとピアノの為の楽曲に仕立て上げました。フリスカというめちゃくちゃ早いテンポのパートと、ラッソーという情緒的でゆったりとしたパートが交互に現れるメリハリのある曲です。
そのモンティのヴァイオリンをギターのために(パコ自身が)リアレンジしたものがこの曲。フリスカ・パートのもの凄いフレーズ、はずむシンコペーションのリズム。もう脳みそ溶けちゃいます!

またパコの70年代に発表されたアルバムは、たいへん素晴らしいものが多く叙情的なタイトル曲を含む「二筋の川」、そして前述の王立歌劇場での「ライヴ」はお勧めです。
ところで、アマゾンへのリンクを貼っていますが在庫なしの作品が多いですね。少しでもパコ・デ・ルシアの魅力に触れたい方がいらっしゃるなら「ベスト・オブ・パコ・デ・ルシア」を挙げておきますが、これにはモンティのチャールダッシュが収録されていないのが残念ですが、彼の素晴らしさは充分に伝わる選曲だと思います。

このフラメンコ音楽に触れたことで、僕の民俗音楽への興味は広がりました。いまインドネシアのガムラン音楽に癒しを感じたり、可愛らしいビルマの民謡に涙したり、音楽だけでなくアラブのベリーダンスや、中国の京劇に魅せられるのも、もとを糺せば、このパコ・デ・ルシアとの出会いがあったからこそだと思います。
1981年、ライブ・アンダー・ザ・スカイ出演の翌年、パコ・デ・ルシアは自らのグループを率いて再来日を果たします。暑い夏の晩、超満員となったライブハウス、六本木ピットインで聴いた生の演奏、本物のフラメンコ音楽は生涯忘れることのない音楽体験であります。

(注1)スーパー・ギター・トリオの名称で有名なアルバム「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ/スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!」はパコ・デ・ルシア、マクラフリン、そしてアル・ディ・メオラというメンバーですが、このライブ・アンダー・ザ・スカイのときディ・メオラは来日せず、代わりにラリー・コリエルが弾いていたのです。
因みにこのフライデイナイト...もメチャクチャ素晴らしい内容。ギター好きな人にはオススメです。

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