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Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima- |
Sunday, October 16, 2005The naked piano 今年6月に会社のピアノをオーバーホールしたのです。最近の一連の写真はそのときのもの。今日の写真では、すっかり全ての弦が取り外され、真っ裸になった状態を見ることができます。これは作業を開始して1時間半後くらいの姿です。この後、ダンパーといって弦の響きを止める装置の、弦と触れ合う部分のフェルトを交換し、そして新品の弦を張っていきます。そして音の調整を始めていくのです。 グランドピアノの弦は、ひとつの鍵盤に対し、1本から3本ひと組で受け持っています。ほとんどのピアノには黒鍵と白鍵をあわせ全部で88の鍵盤があります(よって米国の一部ではピアノのことをeighty eightと呼ぶ人たちもいます)。高いほうから75鍵分はそれぞれ3本の弦が張られ、次の5鍵は2本。最低音側8鍵分は1本の弦でまかなわれています。つまり都合243本の弦が強い張力で張られているのです。その張力は、一部のバランスを急激に壊すと、ピアノ本体そのものを大音響とともに破壊させるだけの力を持っているのだそうです。 さて、この写真に写っているピアノは全ての弦を張り直した後、5日連続、1日あたり8時間から10時間かけて、技術者が少しづつ音の調整作業を行いました。しかしそれだけでは元通りになりません。さらに2週間に1度、技術者に来てもらい、これも1日あたり8時間の作業を、4回ほど繰り返しました。 あれだけの張力でもってバランスをとっていたピアノ。しかも243本の弦。この弦を全て新品に変えた後、再び音楽を気持ちよく奏でるためには、絶えず変化する新品の弦に、時間を掛けて付き合わなければいけません。本体だって強い緊張を解かれ、ふう、と息をつき、そして間も無く再び強い力で引かれるのです。すぐに馴染めるわけはありません。 少しずつ、少しずつ、調整し、徐々に徐々に安定させていく、地道な作業。今回お願いした技術の方はほんとうに良くやってくださったなぁ。プロフェッショナルです。 僕たちはピアノの音を収録するとき、最低でも、その日の朝に技術者に来ていただき調律(ピッチを合わせ全鍵盤のバランスをとってもらう)作業を行います。ピアノがメインとなるアーティストの場合は、その調律師がセッション中、ずうっと立ち会う場合もあります。たったひとつの鍵盤のピッチがほんの少しだけ変わってしまったり、アクション(鍵盤の重さなど、他とのバランス)の微妙な変化を逐次直してもらうためです。ほんとうに微妙な差を調整してもらうのですが、そこまでのピアノに安定させるためには、こういうオーバーホールもときに必要であり、そしてオーバーホール直後は調整に次ぐ調整を施し、再び安定した楽器へと導いてやらなくてはなりません。実際その間は、本番に耐えるだけの安定した楽器ではありませんのでピアノ収録はできないことになります。我々にとっては商売道具を、しばし使えなくするのですから、勇気がいりますけどね。それでも再び安定を取り戻せば、また高らかに歌う楽器へと戻ってくれるのです。もちろんピアノは演奏されることで、その微妙な振動を受けることで、何年もかけてよい楽器になっていきます。 今回20年ぶりに張った新しい弦により、このピアノはより音量を増し、アタック音を強くし、音の伸びを増しました。そして少しずつ安定を取り戻しています。次の20年、どんなアーティストたちと一緒に良い響きを聴かせてくれるのか、とても楽しみです。 Archives(previous archive links)
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