Sound Of Silence -reports from darkroom by M.Niijima-

Tuesday, July 04, 2006

wet collodion process

大木の枝の下にはいり込む。覆い茂る枝葉が陽光を遮りわたしは影の中にあるが、ところどころ木漏れ日が射している。そのほうを見上げると急激な明暗差に目が眩み、瞼を閉じなければいられなくなる。
閉じた瞼の奥、網膜に焼きつくのは黒い黒い枝葉のシルエットと、限りなく白く漏れ射してきた光線。その白い光線は時間経過とともに自らの領域をだんだんと広げる。光の残像はまるで細胞の増殖のようである。いづれやってくる暗黒の世界を知りつつも白い残像は、その時間が許すかぎり、網膜のうえを侵食してゆく。

菅原一剛さんの写真展「MADE IN THE SHADE」を拝見してきました。

日本に初めて渡来した写真技法は「湿板 / wet collodion process」と呼ばれ、ガラス板にコロジオン溶液を塗布し、硝酸銀に浸すことによって感光性を持たせるもの。(全て受け売りです。)
菅原氏はこの「湿板」によって制作を行っている希少な写真家。ただし湿板によって得られる画像は極めてコントラストが低いという。そこで原板をスキャンし、適正なコントラストを導き出してから、大型インクジェット(image PROGRAFというキャノン・ラージフォーマット・プリンターが使われたそうです)によりファインアート紙にプリントしての作品とのこと。

湿板による最大の特徴はウルトラヴァイオレット帯域、すなわち紫外線に反応することだそうです。
熱帯の木の根本から枝葉を見上げるように撮影され、そしてA1、A2サイズに大きくプリントされた作品が「MADE IN THE SHADE」シリーズ。その特殊な感光は、コントラストが低いというより、僕の印象ではシャドウ帯域、ミッド域、ハイライト域とそれぞれの帯域内のコントラストは確かに低いのですが、シャドウとミッド、ミッドとハイライト、それぞれの間には大きな階調の隔たりがあるように感じられました。
そして特にシャドウとハイライトが接する輝度差の大きな部分を見ると、極端な境界効果が現れているのか?(それが紫外線の働きによるものなのか、感剤の化学作用の結果なのかは不明) その境界はにじむようなハイエストライトとなっており、ハイライトの存在を目立たせているのです。

僕においてそれら「MADE IN THE SHADE」シリーズ以上に目を見張ったのが、椿やハイビスカスを捉えた8x10サイズの作品。これは湿板、ガラス板のまま額装されたもの。菅原氏が用いる湿板はAmbro typeアンブロタイプというガラス板そのもので成立するもの、すなわちポジを得られるタイプなので、このような作品が可能なのだそうです。たった4点だけの「湿板そのもの」作品ですが、これを見るだけでも充分満足できるのではないでしょうか。

その他等身大ほどもある人物・全身像のポートレート、奄美の風景もあり見どころいっぱいの写真展。今まで見たことのない光の世界。超おすすめです。

菅原一剛写真展「MADE IN THE SHADE」
お台場(ゆりかもめ台場駅下車正面)の「ル・メリディアン・グランパシフィック東京」の3F「GALLERY 21(ギャラリー・ヴァンテアン)」にて、
7月30日まで、会期中無休。10:00-20:00(最終日は17:00閉場)入場無料。

菅原氏のサイトはこちら「菅原一剛写真研究所」。サイト内の「もっと写真が好きになる。」のコーナーは写真趣味初心者さんにとてもお勧めのコンテンツ。もちろん上級者もハっとさせられることがあるかもです。

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